「スナーク狩り」(宮部みゆき、光文社)

実はとても好きなんです、宮部作品。いろんな意味でプロフェッショナルだから。この作品も重厚なテーマが中心にあり、それを彼女なりに消化し、同時に読者に問い掛けてくるのです。
男に利用されて捨てられた美人OL、職場で“お父さん”と慕われる中年の男、そして失語症の子どもを抱える父親。一見何も関係ないようかに見える大きな3本の線が二つになり、そして一つになって、最後には虚無感が残る。一応ミステリーなのでストーリーについて多くは語りません。語りはしませんが、宮部作品の中では異質とも言える、オチが全く予測のつかない物語だったように思います。「あと残りページわずかなのに収拾つくのか?!」みたいな。
登場人物の全てに何らかの“イタさ”があるからか、現実社会で溺れるように生き、事件の渦に巻き込まれてもがく彼らを見ていると、イヤ〜な意味でハラハラさせられます。個人的には、男に捨てられた美人OLのエピソードがちょっとイタすぎて直視したくありませんでした。気持ちはものすごくわかるんだけどさ。出来れば、裏切った男を殺すことなんてせず、ましてや自殺するなんてせず、植物人間とかにしてやるぐらいの気概を持って生きていきたいと思います。

スナーク狩り (光文社文庫)

スナーク狩り (光文社文庫)