「ひまわりの祝祭」(藤原伊織、講談社)

1作目の「ダックスフントのワープ」(集英社)で第9回すばる文学賞、次作「テロリストのパラソル」(講談社)では第114回直木賞と第41回江戸川乱歩賞をダブル受賞した藤原伊織。表題は3作目です。
世捨て人と化した主人公の前に、自殺した妻そっくしの女やヤクザなどが現れ、抵抗する間もなく彼らに巻き込まれていくお話。そのトラブルがゴッホの「ひまわり」が関係することらしく、作品中には主に印象派に関する美術史が多く出てきます。
前に「テロリストのパラソル」も読みましたが、とにかく藤原作品は中身が緻密でぎゅっと濃いです。何気ない日常の会話や行動、時には習慣さえも伏線になって、それを細か〜く回収していくんですね。細かいところをちまちま凝ってるのに、全体としては統一感があって自然で美しい。見事な構成力。少なくとも物語の構成の技術力はハナマル保証でしょう。
主人公のオッサンがとにかく頭のキレる男で、というかキレてる人で、いちいち会話が嫌味ったらしいところが笑えます。相手の出したカードの意味を瞬時に理解し、追い詰めて次のカードを出させようとするんですね。なので彼についていける少数の登場人物以外は、会話の途中でプンプン怒り出したりします。隠れた見どころ??

ひまわりの祝祭 (講談社文庫)

ひまわりの祝祭 (講談社文庫)